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2021.04.01

海外では本でSDGsを啓発 子ども向けSDGs書籍3選【vol.1】

世界中でSDGs教育が進む中、海外の子どもたちやその親はどんな本を読んで社会課題やその解決方法について学んでいるのでしょうか?今回は子ども向けのSDGs関連海外書籍を紹介します。

Maddi’s Fridge (English Edition)【SDGs#2 飢餓をゼロに】

  • 邦題案:マディのおうちの冷蔵庫
  • 著者:Lois Brandt
  • イラスト:Vin Vogel
  • 出版社:出版社 : Flashlight Press
  • 発売日:2014年9月1日

2人の女の子のソフィアとマディは親友同士で近所に住んでいます。同じ学校に通い同じ公園でいつも遊んでいますが、ソフィアの家の冷蔵庫には栄養たっぷりの食べものがたくさん入っているのに、マディの家の冷蔵庫は空っぽです。ソフィアは、マディの家族には冷蔵庫をいっぱいにするための十分なお金がないことを知り、このことを秘密にしておくとマディと約束します。だけどソフィアは大切な親友を助けたいという想いから、秘密の約束を守るか、両親にマディの家の冷蔵庫について話すかという難しい判断に直面します。

カラフルで可愛いイラストとともにストーリーが進むこの本は、友情、共感、信頼、そしてほかの人を助けることの大切さなどの意識を芽生えさせてくれつつ、貧困の問題に向き合っています。

著者のLois Brandtはアメリカのワシントン州に住む執筆教師で、西アフリカのカメルーンでは平和部隊のボランティアを務めました。「Maddi’s Fridge」は彼女のはじめての本となります。新型コロナウイルスの流行によるパンデミックのあいだ、彼女はバーチャル学校訪問を実施しています。これは「Maddi’s Fridge」の話をもとに友情やコミュニティ、飢餓についての講話を行い、子どもたちからの質問に答えたり話し合ったりする活動です。

パンデミックの混乱で困っている家族を寄付や食料援助で助けること、たった1回の行動は小さなものでも世界を変えることができるということを子どもたちに教えることが目的です。

本書籍は「2014年クリストファー賞」などを受賞し評価されています。

Biblioburro※: A True Story from Colombia【SDGs#3 福祉、SDGs#4 教育】

  • 邦題案:ルイスとロバの旅行図書館~コロンビアであったほんとうのお話~
  • 著者/イラスト:Jeanette Winter
  • 出版社:Beach Lane Books
  • 発売日:2010年6月8日

※「Biblioburro」→スペイン語でBiblio- は本・書籍の意を表す造語、Burro はロバを意味する名詞。

コロンビアに住むルイスは読書が大好き。あまりにも本を読むのが好きなので彼の家はあっというまに本でいっぱいになってしまいました。どうしたらいいだろう?と考えたルイスは、大切な本を捨てずに役立てられる解決策として「旅行図書館(a traveling library)」を思いつきます。ルイスは2頭のロバと一緒に国中をまわり、図書館がない遠くの村に住む子どもたちに本を運ぶ旅をします。

ルイスの旅行図書館によって今まで文字が読めなかった地域の子どもたちの識字率が上がり、豊かになる人が増えました。実話に基づいた感動的な物語と素敵なイラストで読者を本の世界に惹き込む一冊。自分の大切なものをほかの人たちに分けあうことで、だれかを幸せにできるという教訓を教えてくれます。

「Biblioburro: A True Story from Colombia」の著者Jeanette Winterはアメリカ・シカゴ出身のスウェーデン移民の一家に生まれ、シカゴ美術館付属大学で学びました。有名な絵本作家で、数々の賞を受賞しています。彼女の絵本は文章やストーリーの素晴らしさはもちろんのこと、陰影や奥行きがなくシンプルでフラットな独自スタイルのイラストも高い評価を受けています。

Dear Malala, We Stand with You (English Edition)【SDGs#5 ジェンダー平等を実現しよう】

1997年にパキスタン北部で生まれたママラ(Malala Yousafzai)は、恐怖政治によって女の子が教育を受ける権利が奪われたり、女性教育を推進しようとする者の命を狙われたりする悲惨な状況の中、11歳の時にBBC放送の依頼で恐怖におびえて生きる人々の惨状をペンネームで投稿、タリバンが行った女子校の破壊を批判し、女性教育の必要性や平和を訴える活動を続けてメディアから注目されました。

しかし少女教育を支持する発言したことで2012年10月、中学校からの帰宅途中タリバン兵に頭を撃たれてしまいます。その後たくましい生命力で奇跡的に回復し、2013年7月に国際連合本部で演説。“銃弾で私たちを黙らせ意志をくじこうとしたけれど、私たちの行動は止められない”と教育の重要性を訴えました。国連はマララの誕生日である7月12日をマララ・デーと名付けました。さらに2014年には最年少の17歳でノーベル平和賞を受賞。この本にはマララの国連スピーチからの抜粋が含まれています。

力強くシンプルな言葉と美しい写真で語りかけ、世界中のあらゆる場所で女の子が直面する貧困と暴力に対する変化のきっかけを与えます。

著者のRosemary McCarneyは2015年から2019年までスイスのジュネーブに本部がある国連事務局および国連軍縮会議のカナダ大使兼駐在代表を務めた実績をもつ女性。世界銀行とともに国際経済開発に携わった専門家というキャリアのほか、ビジネスリーダー、演説家、そして作家などの顔をもち、幅広い場で活躍しています。経営者のキャリアももつ彼女は、国際開発分野において非営利セクターだけでなく民間企業や公益団体などあらゆる立場の組織にリーダーシップやガバナンスのヒントを与え、ステークホルダーの価値向上を推し進め、持続可能な成長に導いてきました。

本の世界を通じてよりよい世界のつくりかたを学ぼう

今回紹介した海外の子ども向け書籍は、ストーリーやイラストを通じて子どもたちの想像力に働きかけ、SDGsの根底に流れる「未来の地球をみんなの力でよりよくしよう」という精神をわかりやすく伝えてくれています。

自分と違う環境にいる人が存在することを知ったり、その人の気持ちを考えたりすることは、今後さらに多様性への理解が重要となっていく世界でとても大切です。親子で海外の書籍を読むことは英語教育にもつながるので、気になる本があった方は取り寄せ購入してみてはいかがでしょうか。

今回はSDGsのゴールのうち、「#2 飢餓をゼロに」「#3 すべての人に健康と福祉を」「#4 質の高い教育をみんなに」「#5 ジェンダー平等を実現しよう」に関わる3冊の海外書籍を紹介しました。第2弾では、「#13 気候変動に具体的な対策を」「#14 海の豊かさを守ろう」「SDGs全体」に関係する本を紹介します。

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