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2021.01.13

フィンランドとフィリピンにみる、海外教育におけるSDGsへの取り組み

最近、SDGsという言葉を聞く機会が増えてきましたが、海外の学校教育現場では、どのように取り組んでいるのでしょうか。実際、海外の学校を何度も訪れている筆者が、そのあたりに詳しい人へのインタビューを交えて紹介します。

海外の教育現場におけるSDGs

先月の記事では、SDGsのそもそもの目的や、世界各国の達成状況をまとめました。

 

年々注目が高まるSDGs 世界の教育現場ではどのように捉えられている? – バレッドプレス(VALED PRESS)

最近、SDGsという言葉を聞く機会がどんどん増えてきました。大学のような高等教育はもちろん、小学校や中学校など初等教育の中でも年々、重視されつつあります。今回から2回に分けて「SDGs」をテーマに、世界の学校教育との関係について取り上げます。

valed.press

 

そして、後半となる本日の記事では「世界各国の教育現場」でSDGsを踏まえてどのような取り組みが行われているのかをまとめます。

※SDGsには17個もの目標が定められているため、この記事では数ある事例の中から、「5番:ジェンダー平等を実現しよう」と「12番:つくる責任 つかう責任」を中心に取り上げます。

フィンランドのSDGsに関わる教育

それでは、初めは2020年のSDGs達成度ランキング3位を獲得したフィンランドから見ていきましょう。

私はこれまで7回の渡航に渡って、計20校のフィンランドの学校を訪れましたが、それに加えて今回はフィンランドの公立高校で日本語教師を務めていた地下智隆さんにインタビューしてみました。

——フィンランドの教育現場では、SDGsは注力されていますか?

「SDGsについて学ぼう!」という特別な授業はあまり見かけませんが、各教科の中にはもちろん、社会生活の至る所に自然な形で組み込まれているように感じます。たとえば、英語の教科書の中で「環境」についての文章が書かれていたり、保健の授業で、性的同意やLGBTQについて学んだり。

ーーなるほど。重視はされているけれど、特別視はされていないということですね。それでは、「国会議員の女性の割合」において46%を誇り、世界最年少の34歳の女性大統領が誕生したフィンランドの「ジェンダー教育」には、どのような特徴があると感じますか?

日本と同じように、避妊や性病について学ぶ性教育もありますが、大きな特徴としては「発達段階に応じて、包括的な性教育」が行われています。男女の関係性だけでなく、セクシャリティーや人種など複数の観点の「多様性」についても学べる機会を多く設けています。

一つ例を挙げると、フィンランドの幼児期のおもちゃには、下の写真のようなものがあります。幼児期のころからこの世界にはいろいろな人種の人が存在していることを「遊び」の中で知ることで、「違い」を受け入れる心を育んでいきます。中学生になると「セクシャリティーの複数の形態」というトピックもあり、たとえばLGBTQについても学んでいきます。

ーー学校現場だけでなく、社会の中でも実行されている取り組みはありますか?

リサイクルを推奨するような仕組みが充実しています。たとえばフィンランドのスーパーでは、2ユーロのペットボトルのジュースが2.5ユーロで売られていたりします。実はこれは、この機械に、飲み終わった後のペットボトルを返すと、差額の0.5ユーロが返金されます。

***

2つ目の質問の答えを聞いたとき、私はハッとさせられました。フィンランドは「男女平等」という点で先進的だと思っていました。しかし、そもそも「男女平等」という言葉さえも、見つめ直す必要があるのかもしれません。

「そもそも性別は男・女という2つの分け方でいいのだろうか」「多様性を認め合うにはどのようなことが大切なのか」ーー フィンランドではこのような、そもそも論の問いから教育をデザインしているのかなと感じました。

※さらに詳しいフィンランドのジェンダー教育について、地下さんがまとめているページがありますので、ぜひご覧ください。
https://educationxfinland.hatenablog.com/entry/2019/10/09/肯定的な「自尊感情」を育むフィンランドの性

3つ目の質問は、いわゆる「デポジット」という制度です。オランダやスイスなど、ヨーロッパを中心に他の国でもよく見かける制度です。日本でも実施されている事例はありますが、普及率はまだ北欧諸国ほどではありませんね。

フィリピンのSDGsに関わる教育

それでは続いて、フィリピンを見てみましょう。

私はフィリピンについても、今までにトータルで約3ヶ月に渡って、教育現場を訪れています。先生と話していたり、校内の掲示物やポスターを見ていても、SDGsという言葉は、ヨーロッパ諸国の教育現場ほどは浸透していないようです。

※SDGsはEU内だけでなく、国連で定められた目標ですので、もちろん存在を知っている先生もいます。

SDGsの概念はまだまだ浸透していないと思われるのですが、実は私自身フィリピンに行くたびに驚かされることがあります。それは、「女性の社会進出がとても進んでいること」です。

街中で働いている女性労働者を見かけることはもちろんですし、管理職として働いている女性も多いです。学校現場を訪れても、校長先生や教頭先生は女性の方が圧倒的に多いです。実際に、世界経済フォーラムの2017年のデータによると、フィリピンの女性管理職の比率は世界一だそうです。

ちなみに同データでの「男女平等度ランキング」では、149カ国中フィリピンは8位でアジアのトップ、日本は110位とされています。

 

フィリピンの男女平等度、アジアで断トツ、世界第8位

スイスの経済研究機関「世界経済フォーラム(WEF)」は12月18日、世界各国の政治、社会、経済面での男女格差を総合的に評価した「世界男女格差(ジェンダーギャップ)報告書2018年版」を発表、そのなかで

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フィリピンのこの高い順位の背景には、教育現場の中に秘密があるのかとリサーチを続けているのですが、まだその秘密にはたどり着けていません。現状調べている限りでは、教育的な要因よりかは文化的な要因が強いように感じますが、引き続き調べて、いずれまた別の記事でまとめたいと思います。

続いて、ゴミ問題について見ていきましょう。以前、フィリピンの小学校を訪れたときは、ちょうど「リサイクルについて」の授業が行われていました。こちらも同様に、特別にSDGsを意識してというわけではありませんでした。

一方で、これからのフィリピンでは、教育の中でもゴミ問題やリサイクルについて一層力を入れていくのではないかと私は予想しています。と言うのも、フィリピンではゴミ問題、とりわけ海洋ゴミや海洋汚染の問題が深刻化しているからです。フィリピンの美しいビーチも場所によっては、ペットボトルのゴミだらけの場所もあります。

このような背景もあってか、先ほどはフィンランドの事例を紹介しましたがフィリピンでもゴミ回収の巧みなデザインを見かけることがあります。

たとえば、下の写真は私がよく訪れるフィリピンの小学校のゴミ箱です。フィリピンはバスケットボールを好きな子どもが多いので、このバスケットゴール式のゴミ箱は人気があります。

教育の中のSDGs

世界中すべての教育現場をくまなく見たわけではありませんが、現状では、SDGsは先進国を中心に認知が広がっていると感じます。一方で、「SDGsを知ること」が目的になってしまって、具体的な中身が伴わないと、元も子もありません。

それこそ、以前紹介したバリ島にあるグリーンスクールでは、「SDGs」という言葉が生まれる前からSustainableな世界を作るための教育が、ずっと行われ続けています。グリーンスクールの公式ホームページを見ていると、SDGsという言葉は見当たりませんが、SDGsの達成につながりそうな取り組みはたくさんあります。

「まずは全世界の課題を認識する」という意味としては、SDGsは大きな意味をもつと感じます。日本国内の学校現場でも、年々SDGsについて耳にすることが増えているのはいい傾向だと思います。

そして次のステップは、教育現場の中で世界の課題を知っただけで終わらせないこと。社会の中でもその課題に対して、地に足をつけて向かうことが大切になっていくことと、私は思います。

これまでの【世界を旅しながらその土地の教室に飛び込んでみた】はこちら

 

世界の学校に飛び込んでみた – バレッドプレス(VALED PRESS)

世界の学校に飛び込んでみた の記事一覧 – バレッドプレス(VALED PRESS)は、子どものプログラミング教育やSTEM教育、海外教育に興味をもつ親御さんや先生や、これから教室を開きたいと思っている方にも役立つ情報を届けるサイトです。さらにはセカンドキャリア、パラレルキャリアなど「これからの時代を生きる術」を学ぶコンテンツも掲載しています。

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