Column
京都市が、「脱石炭国際連盟」(Powering Past Coal Alliance, PPCA)が主催する「グローバルサミット2021」にて、PPCAへの加入を宣言しました。日本の地方自治体としては初めての意思表示となります。
「脱石炭国際連盟」とは、2017年に英国政府とカナダ政府の主導により発足した国際的なプラットフォーム。パリ協定の目標達成に向けて、石炭火力発電からの脱却を急ぐことを目的としており、3月5日の時点では36政府、36地方自治体、50の企業や団体が加盟しています。
京都市は日本で初めて、石炭火力発電所のフェーズアウト(段階的な廃止)を宣言したことになります。市内に石炭火力発電所はなく、今後も新設の予定はないものの、政府やエネルギーの供給者に対して再生可能エネルギーの利用拡大を働きかけていく決意を、新たにしたというわけです。
これまでも京都議定書を採択した地の当事者として、全国の自治体の環境政策を牽引する役を担ってきた京都市。
2019年5月には、全国の自治体としては初めて「2050年までに温室効果ガス排出量ゼロを目指す」と宣言したという経緯もあります。これをきっかけに、全国の自治体が温室効果ガス排出量ゼロを次々に宣言。「ゼロカーボンシティ」は現在で約280の自治体まで拡大するにいたっています。
このように「2050年までに温室効果ガス排出量ゼロ」を宣言している京都市ですが、具体的にはどのような取り組みを行っているのでしょうか?
京都市が掲げている、SDGsの理念にもとづく11の重点戦略のひとつに「市民ぐるみで、くらしやまちの変化を実現する『低炭素・循環型まちづくり戦略』」があります。
内容は、
など、身近なところで取り組めるプロジェクトが進められていることがわかります。
2018年度時点のデータとして、以下のような報告(※)があります。
※ 2018(平成 30)年度の温室効果ガス排出量及び総エネルギー消費量について
こうした成果は全国的にも評価されており、日本経済新聞社の「第2回SDGs先進度調査」(2021年)の総合評価で、京都市は全国2位というランキング。
第1回(2018年)の全国1位に続く好成績です。この調査は、経済・社会・環境のバランスのとれた発展のための取り組みを評価したもので、京都市はこの中の環境の分野に関し、特に高く評価されているようです。
京都市が環境保全に力を入れているひとつの例として、2015年の四条通り歩道拡幅工事が挙げられます。四条通りは祇園祭の中心にもなる、京都市のメインストリート。
10年の歳月をかけて施工したこの工事により、それまでの片側2車線が1車線に。歩道は3.5mだったものが、6.5mまで広くなりました。
じつはこの工事、SDGsの理念に基づく11の重点戦略の中のひとつ、「ひとと公共交通を優先する『歩いて楽しいまち・京都戦略』」に沿った取り組み。
完成直後は車線が減ったことによる渋滞などで批判の声もあったものの、四条通りに車で乗り入れないほうがいいという共通認識が浸透した結果、渋滞問題はほどなく解消。通行車両は4割減少し、一方では観光客のマイカー利用率も8割減少という成果を生みました。
では四条通りを訪れる人は減ったのか? といえばそうではなく、京都市都市計画局の歩行者調査によれば、歩行者は工事前と比べて毎月1〜2割ほど増えた(2016年)とされています。これは、訪れる人が、電車やバスを利用するようになったためです。
「歩いて楽しいまち」実現のため、京都市はパークアンドライドの充実も強く推進しています。パークアンドライドとは、マイカーと公共交通機関の使い分けにより、都市部の渋滞を緩和する取り組みで、目的地の手前まではマイカー、手前の地点で駐車し電車やバスなどに乗り換え移動する、というものです。
京都市はこれを交通渋滞の解消だけではなく、環境汚染への対策の一環として捉え、交通系ICカードとの併用によるパークアンドライド割引なども行い、積極的にアピール中です。
歩道の拡幅工事やそれに合わせたパークアンドライドの推進が「歩いて楽しいまち」実現を促進しただけでなく、消費エネルギーや温室効果ガス排出量の削減にも寄与し、SDGsの文脈的にも高く評価されています。
京都市は引き続き、徒歩・公共交通・自転車で移動する人を8割強まで増やす、という目標を掲げています。
“古都を守る”根強い意識に加え、新たな概念や未来に向かう取り組みへの姿勢といった、別の側面も合わせもつ京都市。
持続可能なまちづくりという観点で、取り組みを注視していきたいと思います。